鷲の聖書台(池袋チャペル)

チャペルの豆知識

2014/01/01

キリスト教とチャペル

OVERVIEW

チャペルにまつわる豆知識をご紹介します。

鷲の姿をした聖書台が池袋の礼拝堂の右側に置かれていますが、これは英国聖公会マンチェスター教区大聖堂のご厚意によって、立教学院諸聖徒礼拝堂に贈られたものです。

1953年、エリザベス女王の戴冠式が行われた時のことです。日本聖公会からも戴冠式に代表を派遣したいと願い、SPG(英国聖公会福音宣布協会)に問合せをしましたところ、マンチェスター教区ウィルソン主教から小川徳治氏を派遣するようにとの返事がありました。
小川徳治氏は立教大学教授でした。ウィルソン主教と小川氏とは太平洋戦争当時、戦争捕虜と非戦闘員収容所長との立場で関わりが始まります。小川氏はシンガポールのチャンギー収容所における治安維持と民心把握の目的で、キリスト教会の日常活動を認めて、英国、オーストラリアの聖職たちを拘禁せず、またシンガポール大聖堂を教会活動のために使用できるように働きかけました。さらには壊れていたパイプオルガンを修理して、大聖堂を慰めと憩いの場にします。聖公会員である小川氏は特にウィルソン主教が日本兵から乱暴されることもなく、主教の働きをできるよう、できる限り同行したそうです。

日本の敗戦後、小川氏はウィルソン主教の働きかけにより、英軍からの感謝状が与えられ、また英軍病院船によって日本へ送還されました。

再会する小川教授(中央)とウィルソン主教(右)

エリザベス女王戴冠式のために渡英した小川氏は、当時、立教大学教授でした。戦争により大学の礼拝堂内部が惨めな姿になってしまっていることが気になっていました。軍部によって倉庫にされた礼拝堂は、説教壇、聖書台、会衆席などは防空壕の材料にされ、また大理石造りの聖卓は破壊された跡が残っていました。小川氏は礼拝堂を元のように奇麗にしたいと願い、戴冠式前後に古道具屋で、教会用具を探り求めていました。
これを聞きつけたウィルソン主教は小川氏をマンチェスター大聖堂に招き、倉庫に案内し、次のように言われたそうです。「どうか、この中にある物で、日本の教会にお役にたつものがあったら、遠慮なくお申し出ください。」鷲の聖書台はそこにしまわれていた物です。小川氏は立教学院諸聖徒礼拝堂に相応しい聖書台であると判断して、同主教にお願いしたところ、立教大学まで、輸送一切を手配してくださいました。
 鷲の聖書台はマンチェスター大聖堂が改築されるまで長年にわたり使用されたものであり、立教の礼拝堂に置かれてからも、既に61年が経っています。おそらく100年以上使用されている聖書台なのでしょう。
 参考:「聖書台由来」小川徳治(『チャペルニュース』1981年6月号)

立教学院チャプレン長 五十嵐 正司



〔『チャペルニュース』第576号 2014年4?5月号/連載「チャペルのタカラモノご紹介します!」より〕

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