竣工記念メッセージ旧江戸川乱歩邸施設整備事業

2025年3月吉日、改修工事を終えた旧江戸川乱歩邸に寄せて、各界の著名な皆さまからいただいた温かいメッセージを掲載しています。

※所属?役職名等は掲載当時のものです

美輪 明宏(歌手、俳優)

私が江戸川乱歩の原作、三島由紀夫脚色の『黒蜥蜴』を舞台と映画で演じ、大当たりをとった作品が生まれた江戸川邸が改修工事なるという事で懐かしい思いが致します。おしゃれな洋館と並び土蔵があったりと不思議なお家でした。完成おめでとうございます。

波乃 久里子(劇団新派、俳優)

父(十七代目中村勘三郎)は、江戸川乱歩先生が大好きでした。親しくお付き合いをさせていただくなかで、芝居の見巧者でいらした乱歩先生を信頼し、ご支援いただいていたことを深く恩義に感じていたようです。また、母が銀座でバーを開いたときには、文士の方々を大勢お連れになってくださって、おかげで大繫盛したと聞いております。乱歩先生は、私たちの大恩人でした。
そんな乱歩先生の旧邸が、このたび改修工事を終えられ、新しく生まれ変わりますことを、心より嬉しく存じております。新施設のご竣工をお祝い申し上げますとともに、末永く愛される場所になりますよう、今後のご発展を心よりお祈り申し上げます。

五代目 中村 雀右衛門(歌舞伎俳優)

この度、旧江戸川乱歩邸の改修工事が無事完了し、リニューアルオープンの日を迎えられますことを心よりお喜び申し上げます。
わたくしは小学校より大学まで立教に通っておりましたが、2023年に、父?四代目雀右衛門と乱歩の交流を初めて知りました。実際に乱歩邸を訪れて貴重な資料を拝見することで、当時の父の舞台を想像し、家族の思い出もよみがえりました。リニューアルされた新施設も、多くの皆様にインスピレーションを与える良き機会となりますことを願っております。

室瀬 和美(漆芸家)

旧江戸川乱歩邸改修工事完了おめでとうございます。
私が乱歩邸に伺ったのは、かれこれ70年近く前、小学校に上がる前から低学年の頃でした。漆芸作家で近所に住んでいた父親が、乱歩先生に依頼された作品を収める時に連れられて何度か訪ねました。
階段を上がり、陽当たりのよい廊下から和室に入ると、乱歩先生が座っておられました。今でもその情景は脳裏に焼き付いています。『怪人二十面相』や『少年探偵団』など、小さい子供にとっては怖い小説を書く人という印象ですが、座っている先生は穏やかで優しくお話をされる方でした。その時にサイン入りの著書『宇宙怪人』を頂きましたが、今ではボロボロになったその本は、私の宝物のひとつです。
思い出に残る廊下と和室が修理改築され、今後も長く保存されることになりますが、その空間は、私にとっても先生との思い出を浮かべられる大切な場となります。

室瀬 智彌(漆芸家)

新施設の御竣工、誠におめでとうございます。学生時代に平井さんにお世話になって以来、約20年の時を経て全く違った形でのご縁を頂けていること、江戸川乱歩先生と室瀬春二からの贈り物だと感じています。感謝の気持ちを忘れず、今後も私は私にできることを力の限りやっていきたいと思っています。新たな施設が人と人、文化と文化をつなぐ接点になることを願っています。

TOBI(ミュージシャン、俳優)

もう3年前になるでしょうか。わたしが旧江戸川乱歩邸の玄関に足を一歩踏み入れたときのことです。そこを訪れたのは確かに初めてでした。しかしなぜだかここに暮らしていた記憶がよみがえってきたのです。そんなはずはありません。しかしそう強く感じさせるような不思議な家なのでした……。
旧江戸川乱歩邸の改修工事が完了したと聞いてワクワクが抑えられません。あの懐かしい場所に駆け戻って、頭の中の乱歩と時を忘れて対話したい、今はそんな気持ちでいっぱいです。
邸宅には、人を不安にさせるような奇妙さはありません。乱歩が家族とともに暮らしていた家は、生活のなかに、乱歩の几帳面さやこだわりやユーモアが(出汁のように)しみ込んでいる心地よい空間です。乱歩作品の最頻出漢字「奇」という字を分解した「Big(大)なPossibility(可)」にあふれる場所です。
乱歩が五感を通して得た感覚の世界は、作品に存分に描かれており、それを読むことで追体験するわたしたちは、乱歩と共通の記憶を持っているといっても間違いではないでしょう。またすぐにその記憶をたどる旅に出発したくてうずうずしています。新施設竣工のお慶びを心よりお祝い申し上げます。

和嶋 慎治(ミュージシャン)

旧江戸川乱歩邸が改修され、新施設になったとのこと。おめでとうございます。私事ですが、先日漫画家の喜国雅彦さんのお宅にお呼ばれされ、氏の乱歩コレクションの数々を、筋肉少女帯の内田君とともに拝見してきました。ことに東京創元社刊二百部限定の『貼雑年譜』は圧巻でした。狂気のほとばしる乱歩の生々しい実体に、感じ入った次第です。時代に色褪せることなく、いまだ多くの老若男女の心を魅了して止まない乱歩。江戸川乱歩は永久に不滅です。

佐野 史郎(俳優)

乱歩邸に初めてお邪魔させていただいたのは30年ほど前。少年時代から親しんできた少年探偵団シリーズや幻影城の本丸に誘われ胸ときめかせた。当時はご子息の平井隆太郎さんもお元気で、その息子さんの憲太郎さんとお二人に、まだお住まいになっていたお家や書庫となっている蔵などをご案内いただいた。
乱歩が亡くなったのはポプラ社から再発行されたばかりの少年探偵団シリーズに熱中していた小学生高学年の頃。よく覚えている。小説家ではあったけれど、手塚治虫や白土三平といった漫画家たちと同様の憧れの存在だった。その憧れの乱歩邸で、乱歩はいなくとも、隆太郎さんと憲太郎さんがいらっしゃることで気配を感じていた。書斎は明智小五郎の探偵事務所のようだし、蔵は、さまざまな作品で幾度も猟奇的な世界が繰り広げられた現場と重なる。
乱歩邸に足を踏み入れることで、より乱歩世界のリアリティを感じることができるかもしれない。まことの夜の夢への扉が、この現し世にあるのだ。

安達 もじり(NHKドラマ『探偵ロマンス』演出)

改修工事完了、そして新施設竣工、おめでとうございます。ドラマ『探偵ロマンス』を制作するにあたり、何度か旧江戸川乱歩邸にお伺いいたしました。「何よりエンターテイメントを作りたい」という乱歩先生の熱い想いと呼吸を感じられる気がして、背筋が伸びたことを思い出します。直筆の文字にあふれた書庫に入ると本棚の向こう側に乱歩先生がおられるような錯覚に陥りました。ゆったりとしたふかふかのソファーや、おだやかながら鋭い眼差しが印象的なご肖像画のある、あのお部屋の空気も忘れることができません。これから訪問される多くの皆様には「ぜひ乱歩先生の呼吸を感じてみてください」とお伝えしたいです。

十代目 松本 幸四郎(歌舞伎俳優)

旧江戸川乱歩邸竣工まことにおめでとうございます。心からお喜び申し上げます。私は、長年の夢だった「人間豹」を2008年に歌舞伎化することができ、乱歩作品にある“モダンさ”が歌舞伎に新たな息吹を感じさせ艶やかな新作歌舞伎が誕生しました。それも旧乱歩邸に足を踏み入れたことで、乱歩さんにお会いできたような心地になり、勇気というエネルギーをいただいたからこそだと感謝しております。この後も日本の未来に残るべきものとして存在し続けることを祈念しています。

八代目 市川 染五郎(歌舞伎俳優)

この度は、旧江戸川乱歩邸の新施設竣工を心よりお祝い申し上げます。
今回の改装は、日本文学の更なる発展と繁栄を象徴するものであり、大変喜ばしいことでございます。
以前、乱歩邸に伺わせていただき、実際に乱歩先生が執筆なさっていた土蔵の中も見学させていただきました。いち乱歩ファンとしてこの上ない喜びを感じましたし、祖父と父が過去に上演した「乱歩歌舞伎」への憧れの想いを新たにした時間でした。その後、乱歩歌舞伎を再演することが叶い、きっと乱歩邸に伺った際に、乱歩先生のお力を頂いたのだと確信し、そのパワーを胸に乱歩歌舞伎を上演しました。
この新施設から乱歩先生の世界観を多くのお客様に発信することで、永続的に「江戸川乱歩の魅力」は語り継がれていくことと存じます。
改めて、新施設の竣工おめでとうございます。
今後ますますのご発展をお祈りしています。

齋藤 雅文(劇団新派文芸部、劇作家、演出家)

乱歩邸改修のお慶び申し上げます。
新派という芸能は明治に生まれ、ともに時代の申し子であった小説に多大な影響を受けて参りました。中でも、新社会の歪から生じた事件と葛藤を描いた探偵小説とは双子の兄弟の如き親和性に満ちていました。新派悲劇などと揶揄されがちですが、拙作「黒蜥蜴」「怪人二十面相」を上演した際の確信を忘れません。これこそが新派の王道なのだ、と。
乱歩の残した秘宝の館を守らなければならないのは、乱歩を一度でも読んでしまった我々に課せられた責務であり宿命だと思います。

二代目 喜多村 緑郎(劇団新派、俳優)

この度の江戸川乱歩邸改修工事完了、並びに新施設竣工おめでとう御座います。新派で「黒蜥蜴」「怪人二十面相」を舞台化させて頂いたご縁で何度かお邪魔しましたが、その度に数多の蔵書や御生前の書斎の温もりからファンの一人として興奮と、言葉に言い表せない舞台意欲?(笑)を掻き立てられる空間でした。
古典の芝居も、変えてはいけない事、変えなければいけない事を繰り返し、今に至ります。乱歩邸もその様に変化して未来の子孫に受け継がれるのですね。

河合 雪之丞(劇団新派、俳優)

旧江戸川乱歩邸の改修ならびに新施設のご竣工を心よりお祝い申し上げます。
江戸川乱歩先生が作品を執筆していた邸宅を実際に見られることは、非常に貴重な機会です。文化財といってもいい邸宅や土蔵という建造物を、可能なかぎり元の形のまま、建っていた場所に残していくためには大変な労力が必要でしょうから、関係者の皆様には頭の下がる思いです。
ご遺族や立教学院の方々のみならず、世の中の乱歩ファンの方々も喜ばれることでしょう。私も何度もお邪魔しておりますので、身内のごとく嬉しく思っております。
このたびの改修工事を経て、今まで旧江戸川乱歩邸にいらしたことのない方も、いらっしゃる機会になるのではないでしょうか。また、そこから小説家をめざす人も出てくるかもしれません。そうした未来に向けて、ますますのご発展をお祈り申し上げます。

速水 奨(声優)

昨年、インタビューと朗読で伺った時、建物の佇まいと息遣いに感銘を受けたことを昨日のように覚えています。リビングに入ると、品の良い厳選された調度と空間に安らぎを感じました。レトロとモダンな時間を、大きな窓ガラスから差し込む、昼下がりの冬の木洩れ日を背に浴びながら語る乱歩は、実に乙なものでした。さて、工事が終わったらどんな風になるのでしょうか?また、是非、伺いたいですね。
そして、新施設も本当に楽しみです。完成の暁には、必ずお招き頂きたいです。もし叶うなら、少し籠らせてください(笑)。歴史と乱歩の思惟に浸る至福のひとときを楽しみにしています。

柳家 喬太郎(落語家)

江戸川乱歩邸改修完成、誠におめでとうございます。
以前、乱歩先生の応接間でインタビューを受け、書庫も見学させて頂いたとき、ここで大乱歩が過ごしたのかと、心震えました。
子供の頃は二十面相にドキドキし、噺家になってからは『赤い部屋』と『二廃人』を噺として演らせて頂いている身としては、未来永劫、乱歩先生の作品とこの乱歩邸が、日本の文化として残され、伝えられてゆく事を、心よりお祈りしております。

旭堂 南湖(講談師)

旧江戸川乱歩邸のリニューアルオープン、誠におめでとうございます。私が初めて乱歩邸を訪れたのは、2002年3月25日の午後のことでした。その際、平井隆太郎先生とお話をさせていただいた記憶が、今も鮮明に残っております。あれから随分と月日が流れましたが、乱歩先生が創り上げた物語は、時代を超え、世界中の人々に愛され続けています。
私は講談師として、乱歩作品を講談で語り継ぎ、その魅力をさらに多くの方々に届けたいと考えております。新たに蘇ったこの乱歩邸が、多くの人々に愛されますよう、心よりお祈り申し上げます。

倉持 裕(劇作家、演出家)

旧江戸川乱歩邸を見学させていただいたのは、確か冬だったと思います。
森閑とした部屋に置かれた、背もたれの高いビロード張りの椅子。意匠を凝らした重厚な机。著作が収められた木箱が整然と並べられた、あの土蔵——まさしくここは、あの奇怪な作品群を物した作家の家だ、と何やら身震いした覚えがあります。これがもし夏に訪れたならば、一転して、湿度の高い、ぬらぬらとした、それはそれでまた乱歩的なムードが味わえたのかもしれません。
この度、改修工事が完了したとのことで、この先もずっと、あの屋敷が妖しく発光し続けるだろうことを、大変喜ばしく思います。

辻 真先(作家、脚本家)

かつて大乱歩が起居した邸が改修復活とのこと、おめでとうございます。
再誕した館に魂を吹き込むのは、つづくわれわれミステリファンの責務と存じます。永く日本ミステリの象徴としてこの地に在らんことを祈念いたしつつ。

お使いのブラウザ「Internet Explorer」は閲覧推奨環境ではありません。
ウェブサイトが正しく表示されない、動作しない等の現象が起こる場合がありますのであらかじめご了承ください。
ChromeまたはEdgeブラウザのご利用をおすすめいたします。